鎌倉では早くも桜の開花が話題になる彼岸の頃、東北の海や山河はまだ厳しい冬の表情のまま、静かに私たちを迎えてくれました。
東日本大震災の発災から満三年が経過し、私たちが生活する首都圏では「大震災から“もう”三年」という言葉が当たり前のように使われていました。しかし、今回の訪問学習に参加した鎌倉の中学生たちは、肌を刺すような寒風の中で、強く「“まだ”三年」という実感を持ったことと思います。
海抜20メートルに位置しながら津波の直撃を受け、再開を断念してこの春に閉校となった中学校を訪ねました。「あの日・あの時」の時間を刻んだまま止まっている時計、「3月11日(金)・卒業式総練習」と書かれたままの黒板、そして校庭の全面に建ち並ぶ仮設住宅。その学校の生徒たちは、他校を間借りしながら3年間の中学校生活を送り卒業して行った由。平素、自分たちが享受している恵まれた学習環境との違いを、どのように受け止めたでしょうか。
仮設住宅には、鎌倉から応援のメッセージをしたためた絵馬をお届けしました。遠くからやってくる中学生たちの気持ちに応えようと、不自由な生活の中でも、手作りの品や沢山のお菓子を準備して待っていてくれたお年寄りの笑顔に接し、一人ひとりの心の中には熱くこみ上げるものがあった筈です。
また、今や“防災先進地域”となっている現地では、中学生たちが地域における防災活動において重要な役割を担い、実践的な訓練を積み重ねていることを目の当たりにして、鎌倉地域の立ち遅れに危機感を持つとともに、今後の自分たちの役割に意欲を燃やすメンバーもいました。
今回、鎌倉の中学生たちが直接「見て・聞いて・感じた」ことは、今後の継続的な学習を通じて現実に対する正しい「理解」となり、「自分たちには何が出来るのか」「何をなすべきなのか」と云う真摯な問題意識を醸成することでしょう。やがてそこからは、社会の成員として、私たちの国と社会の未来に対する強い使命感が育くまれて行くことを信じます。
昨夏、鎌倉の地に気仙沼の中学生たちを迎えて「鎌倉ジュニア防災フォーラム2013」が開かれてから7か月、節目の春に斯様に意義深い交流活動が実現したことは、偏に気仙沼市立階上中学校と鎌倉市立第一中学校両校の生徒職員の若く・真っ直ぐな思いと、それを全面的に支持・支援された校長先生を始めとする先生方の熱意によるものです。
また、神奈川県・宮城県双方の学校教育・社会教育の各機関や地域関係の皆様から様々なご協力を賜り、この訪問学習は所期の目的以上に実りあるものとなりました。
ご理解とお力添えを戴いた全ての皆様に衷心より感謝申し上げ、ここに活動報告をお届け致します。